2019年11月15日

「正倉院の世界 ― 皇室がまもり伝えた美 ―」展

御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」
(東京国立博物館)

東京国立博物館「正倉院の世界 ― 皇室がまもり伝えた美 ―」

(Youtube/インターネットミュージアムhttp://www.museum.or.jp/

「御即位記念特別展」とも銘打たれた展覧会。
気づいたらもう会期半ばで、正倉院宝物の代名詞「五絃琵琶」こと「螺鈿紫檀五絃琵琶」が東京に来てたというのに、それを知ったのは既に奈良へお帰りになった後。
とはいえ、五絃琵琶の精緻な模造品が通期展示だし、これまた正倉院宝物の代名詞「蘭奢待」が通期展示されているとあっては、行かぬわけにはいくまい。
例によって、金曜の会社帰りにダッシュで上野。
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ワタシが行ったのは、会期終了1週間前の金曜日。
毎回会場のコインロッカー確保で手間取るので、今回はおとなしく上野駅構内のコインロッカー(400円)を借りて荷物を突っ込み、貴重品と単眼鏡だけサコッシュで持ち歩くことに。
そして、トーハクの門で「正倉院の世界展 20分待ち」の文字を目の当たりにしました。
うーんんん……まぁ、昼間だと1時間とか待つらしいし、翠玉白菜の70分待ちに比べたら可愛いものだ。

参考: 翠玉白菜 (2014/07/03)

実際、20分はスマホでゲームとかしてたら超余裕でした。

中は、まぁまぁスゲェ人。
間違っても、空いてはいない。
(やっぱ会期始まってすぐ行くべきよね)

最初の展示は、聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物。
そもそも「正倉院」の始まりが、聖武天皇没後、光明皇后が亡き夫の供養にと、遺愛の品を東大寺に奉献したことだそうな。
聖武天皇直筆の「雑集」は、一言でいうなら「聖武天皇のスクラップブック」。
ものすごい長い紙に、聖武天皇がお気に入りの詩文をメモ書きしていったらしい。
丁寧に書かれた筆跡に、聖武天皇の几帳面なお人柄を感じる。

すごい人だかりができていたのは、今回の目玉でもある「平螺鈿背八角鏡」。
見事な螺鈿と琥珀を鏡の背面に配した、美しい鏡です。
聖武天皇の遺品とされる「紅牙・紺牙撥鏤碁子」は、象牙製の碁石に可愛い鳥さんがひとつずつ描かれているのですが、展示脇の説明文には「摩耗が少ないのであまり使われてなかった模様(大意)」と書かれていて、ちょっと笑ってしまう。
この辺の小さい展示品は、人の頭をかき分けてようやくちらっと見られる程度。

次の展示は、染織品いろいろ。
古代の失われてしまった染織技術が偲ばれます。
千年以上前の布が原型をとどめている、というのは凄いこと、なんだけど、現代日本の一般人から見ると、どうにも凄さはわかりづらい。
古い布がいくつも展示されていましたが、混んでたのでこのあたりはスルー。
ただ、「花氈(かせん)」という大きな敷物は、大きな展示ケースに単独で展示されていたので見やすかった。
着色した羊毛を模様の形に並べてフェルト状にした、というもので、その大きさ、そして模様の緻密さは、ハンドメイド好きにはちょっと刺さります。
千年前にここまでの技術があったとは。

更に次へ進むと、お香関連のお品が並んでます。
重要文化財の香木2点、沈水香は「THE・木」って感じの外見。白檀香は逆にまっすぐ。
お香を炊く香炉の展示もありましたが、それより気になるのは、彼の名高い名香・蘭奢待こと「黄熟香」です。

現物。
結構デカい。
そして表面は、木の樹液が滲んだようにテッカテカ。
何も知らなければ、さっきの「沈水香」同様に「THE・木」としか思わないのですが、足利義満、織田信長、明治天皇という歴史の名だたる偉人が切り取った跡が付箋で残っているのが生々しい。
近くにいた子供が「いい匂い」と言い出したので、まさかと思いながら展示ケースの細い隙間から懸命にスンスンしましたが、ワタシの残念なお鼻では蘭奢待の香気は感じられませんでしたとさ。

更に先に進むと、いよいよ正倉院の琵琶コーナー。
今回は、「螺鈿紫檀五絃琵琶」が前期展示・「紫檀木画槽琵琶」が後期展示、ということで、ワタシが見に行った時には「紫檀木画槽琵琶」が展示室の奥に物々しく展示されていました。
「前で立ち止まらないでくださーい」と係員の人が呼びかけるので、仕方なくぐるぐると周囲を回りながら眺めます。
捍撥(かんばち・バチの当たる場所)の絵は、復元された絵が展示室の前の方に展示されていました。
草原での騎馬民族の狩猟を描く、異国情緒漂う一品です。
赤み強くて結構ハデ。
それよりは、裏側の木画(色の違う木をモザイク状に組み合わせて絵を描く手法・寄木細工みたいなもの?)のお花や鳥の華やかさの方が好みでしたな。

個人的には、その手前に展示されていた「螺鈿紫檀五絃琵琶」の模造品の方がインパクトありましたが。
側では、製作工程の映像も流されていました。
この模造品、完成するまで、実に8年もの歳月を要したそうな。
材料自体が今では揃えるのが難しく、紫檀を削り、螺鈿や玳瑁を加工してその紫檀に嵌め込んでいくのも熟練の匠の丁寧な仕事が必要。
弦は上皇后陛下が育てられた繭から紡いだ糸を使う、というこだわりようです。
しかも、この模造品のポイントは「楽器として演奏できる」ということらしい。
展示室には、じゃらんじゃらんと琵琶の調べが流れていましたが、それがこの模造品の奏でる音色だそうで。
そんなに琵琶の音色を聞いたことはないので良し悪しはわからん。普通に「琵琶だなぁ」という感じの音でした。

それらを踏まえたうえで目の当たりにした「模造品」。
イヤ凄いぞコレ。
煌びやかな夜光貝の輝き。そこかしこに見られる精巧な彫り。
「模造品」とはいえ、これはもうそのまま博物館に収蔵できる、立派な工芸品ですよ。
更に驚くべきは、この模造品の元は千年以上前に作られている、という事実。
シルクロードの文化スゲェな。

続いて工芸美術品いろいろ。
伎楽面はちょっと怖い。
「白瑠璃碗」は、丸くカットされた模様が光を反射してキラキラと美しい。
パッと見今の大量生産のガラスの小鉢っぽいんだけど、これまた千年前にこれが作られてるって考えると「……どうやって?」ってなる。
(電動グラインダーなんてないでしょ?)
隣によく似たお碗が展示されていましたが、正倉院のものに比べてくすんでる。
何が違うのかと思ったら、こちらは高屋築山古墳(安閑天皇陵)から出土したもので、土に埋まっているとガラスがくすんでしまうらしい。
いずれもササン朝ペルシアで同時期に作成されたものではないか、ということですが、正倉院の白瑠璃碗は「施設の中でずっと保管されていた」という点でも、大変貴重なものらしいです。
なるほど、千年以上前の宝物が、保管庫ごと目録付きで保管されている、と考えると凄いな。

最後に「宝物をまもる」と題して、正倉院の管理に関するいろいろが展示されていました。
江戸時代に作られた、収蔵品の見た目やサイズを書き写した図録。
明治時代にはそれに加えて、収蔵品の写真も撮影されていた模様。
五絃琵琶の当時の写真もありました。

興味深かったのは「甘竹簫」という、竹の管で作られた簫。
明治時代にこの簫は「12管」で修復されていたけれど、近年別の部品が発見されて「18管」だったことが判明し、新たに18本で修復作業が進められているのだそうな。
という訳で、明治期の12管の修復品、近年発見された部品、18管の修復途中の品、の3点が展示されてます。

正倉院の所蔵品は全部キレイな状態で保管されていたのかと思いきや、実は結構バラバラになっちゃってるのねー。
っていうか、「近年別の部品発見」ってどういうことよ。

と思った矢先に現れたのが「塵芥」。
千年の年月に耐えられなかった収蔵品も多く、それらは何となく元の形がわかる「残欠」から、もはや何のパーツか全くわからない粉々レベルの「塵芥」まで、正倉院では大事に保管して分析を続けているそうな。
この「塵芥」をひとつずつ検証し、更に細かい分類に整理していく様子が映像で流されていましたが、気の遠くなるような話です。
前述の「別の部品」というのも、たぶんこの作業の過程で見つかったのでしょう。

最後のコーナーには、実物大の正倉院の一部の模型の他、実際の正倉院内部のVR映像、実際の正倉院の開封の儀の様子の映像などが見られました。
正倉院は「勅封」というシステムで封印されており、天皇の直筆の文書を使って封印しているんですって。
その封印を開くことができるのは、天皇が立てた勅使だけ。
なるほど、無闇に開けられなかったからこそ、ここまでキチンと収蔵品が保管されていたのね。

「勅封」のレプリカが撮影可だったので、撮ってみた。
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海老の形をした錠前「海老錠」に、ぐるぐると紙が巻きつけられている。
これが「勅封」だそうな。

最後のコーナーには、明治時代に作られた琵琶2点の模造品が展示されており、なぜかこれらは撮影OK。
そのうちひとつは、件の「螺鈿紫檀五絃琵琶」でした。
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これだって100年も前に、当時の技術の粋を集めて作られたお品なんだから、当然立派な工芸品。
写真撮らせて下さってありがたや。

もうひとつの模造品「螺鈿紫檀阮咸」も、これまた眼福の一品。
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この写真撮るのもめちゃめちゃ混んでましたが。
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↑の奥の展示ケースに、ふたつの模造品が展示されてます。
この様子で、この日の会場の混雑ぶりが想像できるかと。

音声ガイドを返却し、いざミュージアムショップ。
……と思ったのですが、例によってミュージアムショップのレジがものすごい行列していたので、何か買うのは諦めました(´・ω・`)
代わりと言っては何ですが、アクリルキーホルダーガチャを1回引きました。
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まさかの一発五絃琵琶ゲット!
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1回500円、と、ガチャにしては高めのお値段設定ながら、ガチャ自体が結構たくさん置いてあって行列しなくてもいいせいか、結構大人の皆さんがガチャ引いてました。

ここでだいたい8時半。
閉館は9時。ということは、一応あと30分ある!
と思ってもう一度展示室を巡ろうかと思いましたが、既にそこまでの元気はない。
蘭奢待だけ、もう一度まじまじと眺めて帰りました。

今回の展覧会、いつもワタシが行くものに比べて、ちょっと客層が違ったのが印象的。
金曜夜の展覧会、というと、だいたいお勤めや学校の帰りっぽい方々ばかりなんですが、今回は意外に子供連れの方がちらほら見られました。
あと、アジア圏の外国の方もぼちぼちと。
さすがは天下の「正倉院展」。

しかし、帰宅後、目録を整理していて気づいた。
今回展示されていたもののうち数点は、数年前の「日本国宝展」でも見ていた、ということに。

参考:日本国宝展 (2014/11/28)

「竜首水瓶」「海磯鏡」あたりはトーハクの収蔵品なんだから、当然と言えば当然。
あの時は「玉虫厨子」とか「漢委奴國王印(金印)」とか目玉展示がゴロゴロあったからなー……
(↑言い訳)




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posted by 実里 at 23:00 | Comment(0) | 芸術鑑賞 | 更新情報をチェックする
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