
↑はチケットの写真。
今回やってきたジョット作品4点のうちひとつ「聖母子」の写真です。
ルネサンス期以前の聖母子像における幼子イエスの表情には子供らしさが微塵もない、と思っているのは私だけじゃないと思う。
それもイエスが神の子たる証、なんだろうか。うーむ。
東郷青児美術館は、新宿の損保ジャパンビルの42階。


エレベーターで上がると、美術館の入口前からちょっとした展望台気分が味わえます。
(クリックで拡大)
携帯で撮ったので、画質はイマイチですが。
ちょうど、新宿西口を見下ろす感じね。
さて、展覧会。
ジョット(ジオット)はフィレンツェの13〜14世紀の芸術家です。
まだ芸術家が大工などと同じ「職人」と見なされていた頃の芸術家ですが、それまでの平面的である意味記号的だった宗教画に遠近法や写実的描写を取り入れたとして、「最初の画家」とか「近代絵画の父」などと呼ばれているそうな。
…といっても、私も「西洋美術史のかなり最初に出てくる人」くらいにしか知りませんでしたが。
ジョットの代表作はほとんどが壁画や建築物ということで、ジョットのオリジナル作品の展示は4点だけ。
あとは精密な写真によるパネルの展示だったり、彼の工房や同時代の他の職人による作品の展示だったり。
とはいえ、この時代は良くも悪くも「芸術家個人」のオリジナリティが薄いのと、この美術館特有の「わかりやすい説明パネル」を用いた展示のおかげで、オリジナル作品の展示が少なくてもかなり満足のいく展覧会でした。
携帯用祭壇画の展示などでは、隣に図つきで「どこに何という聖人が描かれている」というのが一目瞭然で驚愕。
音声ガイドも貸し出してたけど、わりとなければないで平気な雰囲気でしたよ。
モチーフも「聖母子」が多く、わりと理解しやすげな作りになってました。
あとは、代表作「スクロヴェーニ礼拝堂の壁画」のパネル紹介もかなり充実してました。
聖母マリアの生誕からキリストの復活までを壁面全体に描き出した様は、まさに壮観。
スクロヴェーニ礼拝堂はイタリア北部の町パドヴァにあり、現在でも物凄い厳重な保護の下に公開されているそうな。
でもって余談ながら、この中の「東方三博士の礼拝」の背景の中に描かれている「長く尾を引いた星」は、1301年に地球に最接近したハレー彗星らしいです。
それゆえ、1986年に再接近したハレー彗星の探査機に「ジオット」の名がつけられたとのこと。
言われてみれば、子供の頃に学習雑誌か何かでこの絵は見た記憶があるし、「彗星探査機ジオット」という響きにも聞き覚えはあるのです。
「Giotto」は今では「ジョット」と読むのが一般的なようですが、大学の図書館にあった画集には「ジオット」って書いてあったし、「ジョット」と読むようになったのはごく最近のことなんでしょうな。
閑話休題。
展覧会の感想に戻ります。
一応「西洋絵画の父」という話で「写実性が高まった」という話ですが、それでもルネサンス以前の宗教画というのは、ルネサンス以降に比べればまだまだ記号的で、どことなく仏画などにも通じる「聖」なる雰囲気を感じます。
なんつーか、異教徒が気軽に絵ハガキとか買って帰っちゃいけないような気がしてしまったり…
印象的だったのは、ある祭壇画の周囲にはガラスで蓋をされた小さな窓が無数にあり、それらの中には聖人の名前と聖遺物が封入されている、というもの。
「聖遺物」とは、文字通り聖人の遺物なこともありますが、たいていは遺骸の一部で、中世には聖人の遺骸を掘り出して分割する、という、現代の異教徒からは想像もつかないことをしてたようです。
仏教における仏舎利信仰に近いものがあるのかもしれませんが、なんか生々しいよなぁ…
ジョットは、日本ではマイナーな部類に入るためか、美術館の混雑は週末に関わらず比較的空いてました。
上述の通り、パネルが懇切丁寧なので、音声ガイドはほぼ不要。
そして、展示作品もわりと少なめ(1時間くらいで見終わった)なので、結構気軽に行けるかも。
音声ガイドを借りずにやや後悔な点がひとつ。
「聖ドンニーノの物語」という説話絵巻的な作品がありました。
狂犬に咬まれた人を治療後捕縛・斬首されるも、自分の首を持って埋葬場所を探す、というデュラハンな奇跡を起こしたらしいです。
埋葬後も墓で奇跡が起きたらしく、この話の詳細を知りたくて、帰宅後ネットで検索したのですが、マイナーな話なのか情報ほとんどゼロ(´・ω・`)
見つかるのは今回の展覧会を見に行った人のブログばかり…
図書館で「黄金伝説」でも紐解くしかないのかねぇ…
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